岡村 愛奈(仮名)

学生・22歳

グロ日

昨日の話なんだけど4本目の親知らずを抜いた。終わった~~~!!!これでようやく「ふと思い出しては暗い気持ちになることリスト」から親知らずの項が消えた(ほかに卒論、将来、死、両親のセックスから自分が生まれたという事実、など)。ここまでだいぶ頑張ったので今後私の身には一切の痛いことやグロいことが起こらないでほしい。

 

親知らずの抜歯は施術中いかにご機嫌でいられるか勝負なところがあるなと過去3回の試合から学んだので、買ってあった漫画の単行本をひたすら読んでテンションを上げようと努めた。『夢中さ、きみに。』まじで面白すぎる。『さよなら絵梨』やっぱり良い。公開当初の「藤本タツキの新作読み切りが来るぞ!!!うおーーー今度は一体どんなスゴいものを見せてくれちゃうんだ!?!?!?」的な空気の中で読んだときとはまた違った良さがある。今回は下宿先から実家に移動してその日のうちに施術という詰め詰めスケジュールで、前日の夜、帰省の用意が一切できていない焦りと抜歯の恐怖がないまぜになって軽くパニックになり、さらに「こんな精神状態で明日の施術を乗り切れるのか」とよりいっそう不安が増すという良くないスパイラルにはまっており、なんとか寝て起きた後も沈んだ気分がしっかり尾を引いていて参っていたのだが、両作のおかげでだいぶ助けられた。

 

車で歯医者に向かう道中、母に「施術中正気を保っていられるだろうか」と泣き言をもらすと、母が歯を削られたりしているときはなぜか決まってモーツァルトの『トルコ行進曲』が頭の中で流れている、という話をしてくれた。「きっとテンポが緊張しているときの心拍数と響きあうのよ!やっぱりモーツァルトってすごいんだわ」と言っていたがそれはどうか知らない。

今回の施術中は、そんなわけで『トルコ行進曲(岡村母歌唱ver.)』が頭の中で「てぃやらららん てぃやらららん てぃやららてぃやららてぃやらららん♪」と流れる中、歯医者の天井の石膏ボードの模様の中から、ひらがなっぽく見える部分やいちばんかわいく顔に見える部分を目で探していた。

こういうやつ

あんなに怖かったのに麻酔を入れおわったとたんなんか急にスンとして、歯を抜かれているあいだもけっこう落ち着いた気持ちでいられた。抜かれ慣れてきたのだろうか。あるいはなんか麻酔自体にそういう鎮静作用みたいなのがあるのかな。

今回抜いた親知らずはちょっと面倒くさい生え方をしていたのと、思いのほかでかかったらしく、素直に生えていた前回よりちょっと時間がかかった。掘り出された歯をまたもらってきたのだが、そのでかさっていうのが、形そのままに相似的に大きいわけではなくて、なんかこう、奥歯を作る用のプログラムの誤作動で生まれたみたいな、漢字に対する西夏文字みたいな感じのでかさで面白い。ぜひお目にかけたいけど歯肉とか付いてるのでここには載せられない。

 

チェンソーマンのアニメを見た。アマプラとかで見るつもりだったのだけど、居間でだらだらしていたらなんだかんだ0時になって、ちょうどついていたテレビで流れはじめた。すごいですね……。映像かっこいいし声いいし音がブリブリしている……。台詞や場面が補われてるところが多かったり独自のカットがあったりして、漫画の忠実な映像化にとどまらず、映画的な良いものを目指すぞという意志を感じた。藤本タツキの漫画は映画っぽいってよく言われるし、私も「そのまま映画にできちゃいそ~~」なんて思いながら読んでたけど、やっぱり漫画は漫画で、あの物語を本当に映画っぽいテンポや流れで見せようとするにはあれくらいの補いが必要なんだな。たまたま行きに読んでた『さよなら絵梨』も、叶うなら映画で見てみたい。映画パロディーのあざとさもなんか藤本タツキっぽいぞと思った。

居間には母もいた。こういういかにも若者っぽいものを親のいる場で楽しむのってなんか気恥ずかしいね。母は放送中ほとんど携帯を見ていたんだけど、一回だけ「この子金玉を売ったの?」と言っていた。