岡村 愛奈(仮名)

学生・22歳

腹筋とむき出しの世界

休学中はなんか全体的に腹に力を込めて過ごしたい。腹筋を強化すれば、なんか全てとは言わないまでもいろいろ解決しそうな気がする。猫背とかO脚とか、胃腸を壊しやすいのとかも良くなるし、3割増しで俊敏に溌剌と過ごせるし、前向きで明るい人柄になっちゃったりもするかもしれない。

今日も今日とて部屋にこもっていた。自室の本棚にあった天久聖一の『サヨナラコウシエン』を読み直した。すごく良いな~。電気グルーヴのMVとかのあのしっちゃかめっちゃかなテンションなのに、本当にまっすぐな成長譚で泣けてしまう。もうすぐ小学生になる少年ふじおが、死んだおじいちゃんとの思い出をたどりながら、大好きなおじいちゃんとの別れに向き合っていくひと晩の冒険の話。ファンタジーと突拍子のないギャグにあふれた賑やかな冒険世界で、出会う大人たちが皆本当に優しくて、ふじおを見守るまなざしの暖かさが沁みる。その中で、おじいちゃんが倒れた日の回想シーンだけショッキングさが際立っていて、脱衣所の床に横たわる大好きなおじいちゃんの裸体のグロテスクさとか、頼りにしている大人が本気で泣いているところを見てしまったときの心細さとかが異様に生々しい。守られたあたたかいメルヘンな想像力の世界にとつぜん隙間が現れて、冷たくて生々しいディテールの世界に投げ出されるこの感覚は幼少期に心当たりがある人は多いのではないか。ふじおは冒険の中でおじいちゃんとの死別と向き合ったけど、それは安心な世界に突如として開いた穴から見えたむき出しの世界と向き合うことでもあったのかもしれない、とか考えた。ところで当然のようにピーコが登場してファッションチェックをしたりしているのは大丈夫なんだろうか。

『サヨナラコウシエン』を久々に読んで感動した勢いで、天久聖一氏デザインのTシャツをポチってしまった。石抱きのやつ。夏も終わり掛けだけど到着が楽しみです。

https://twitter.com/amahisa/status/1558665477500592128?s=20&t=4FTakCca31hN_pjbLq0PnA